盆踊りは、日本だけのものではありません。ハワイの小さなお寺では100年以上、毎年夏になると櫓を囲む輪ができます。ブラジルでは8万人が集まる盆踊りがあり、マレーシアやシンガポールでは何万人もの人が、日系でもないのに浴衣を着て踊ります。
移民が海を渡るとき、盆踊りも一緒に旅をしました。ご先祖を偲ぶ心と、誰でも輪に入れる開かれた形。その二つがあったから、盆踊りは世界のあちこちで根づいたのです。このページでは、海の向こうで踊り継がれる盆踊りを、開催地と公式情報とともに紹介します。
盆踊りは、お盆にご先祖の霊を迎え、送り出すための踊りです。むずかしい振りを競う場ではなく、櫓を囲んで誰もが同じ輪で踊る——この「誰でも加われる」形こそが、盆踊りが海を越えられた理由でした。
19世紀の終わりから20世紀のはじめ、たくさんの日本人が仕事を求めて海を渡りました。ハワイやアメリカ西海岸のサトウキビ畑へ、ブラジルのコーヒー農園へ。彼らは小さなお寺を建て、そこで盆を営み、盆踊りを踊り続けました。やがてそれは、遠い故郷とつながるための、そして仲間と再会するための、夏いちばんの行事になっていきます。
いまでは、日系のコミュニティを超えて広がっています。マレーシアやシンガポールの盆踊りは、地元の人たちも一緒に楽しむ多文化の夏祭り。ロンドンやシドニーでは、日本文化フェスティバルの目玉として、来場者みんなが輪になって踊ります。盆踊りは、いま世界の踊りになりつつあります。
海外の盆踊りといえば、まずハワイ。6月から9月にかけて、島じゅうのお寺で毎週末どこかで盆踊り(ボンダンス)が開かれます。その数は日本本土の外では屈指で、100年以上とぎれずに続いてきました。
ハワイならではの見どころもあります。福島から移民した人が多かったため、テンポの速い福島音頭が名物になっている地域があること。ハワイ島ヒロでは、録音の音頭のあとに生の太鼓が入って、輪がぐっと熱くなること。浴衣やハッピを着た地元の人にまじって、旅行者がふらりと輪に入っても、誰もとがめません。
アメリカ本土とカナダでも、6月から8月にかけて各地の仏教会(Buddhist Church / Temple)でお盆(Obon)が開かれます。カリフォルニアのリトル東京やサンフランシスコ、シアトル、ソルトレイク、シカゴ、そして東海岸まで。太鼓、屋台、そして境内いっぱいの盆踊りは、その街の日系コミュニティの夏の顔です。
北米の盆踊りには、重い歴史も刻まれています。第二次大戦下、日系人は強制収容を経験しました。ニュージャージー州のシーブルックの盆踊りは、収容から再定住した家族たちが1945年から続けているもの。盆踊りは、亡き人を偲ぶだけでなく、ばらばらにされたコミュニティが再びつながるための場でもあったのです。
ブラジルには、世界でいちばん大きな日系社会があります(日系人はおよそ200万人)。1908年に始まった移民の歴史のなかで、盆踊りはお寺の行事から、街をあげての巨大な祭りへと育ちました。
バイーア州サルバドールの盆踊りは、2025年に8万人以上が訪れたブラジル有数の規模。パラナ州マリンガの日伯文化祭にも約7万人が集まります。太鼓やよさこい、日本食の屋台がならび、盆踊りはその中心です。
ひとつ、面白いことがあります。南半球のブラジルは、日本と季節が逆。サンパウロなどでは日本のお盆に近い時期に開きますが、アルゼンチンやボリビアの盆踊りは、真夏にあたる1〜2月に行われます。地球の裏側では、雪もない夏の夜に浴衣で踊っているのです。
いま、日本とアメリカ大陸をのぞけば、いちばん大きな盆踊りはアジアにあります。マレーシア(クアラルンプール近郊やペナン)とシンガポールの盆踊りは、それぞれ何万人もの人でにぎわう一大イベント。日系企業の駐在員が多いこと、そして地元の人たちが日本の食やポップカルチャーを大好きなことが重なって、日系でない人も一緒に踊る、多文化の市民祭りになりました。
2026年、クアラルンプール近郊サンウェイシティの盆踊りは50回目。マレーシア史上最大規模とうたわれています。フィリピンのマニラでも、日本人会が24回目の盆踊りを開くなど、東南アジアには長い歴史を持つ盆踊りが根づいています。
ヨーロッパやオセアニアでは、盆踊りは日本文化フェスティバルの目玉として親しまれています。ロンドンのジャパン・マツリはトラファルガー広場で無料開催され、来場者みんなで踊る時間があります(2026年は10月4日)。ドイツ・デュッセルドルフの「ジャパン・デー」は60万人以上が訪れるヨーロッパ最大級の日本イベント。
南半球のオーストラリアやニュージーランドでは、こちらも季節が逆。シドニーのマツリは12月、真夏の日本祭りとして開かれます。日本から遠く離れた街でも、太鼓が鳴れば自然と輪ができる——盆踊りの力です。
旅先で盆踊りに出会ったら、ぜひ輪に入ってみてください。海外でも、基本は日本と同じ。上手に踊る場ではなく、加わって楽しむ場です。いくつかだけ、頭に入れておくと安心なことを。
Shall we BON dance? —— 世界のどこでも。
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最終更新日: 2026年8月31日